[ テーマ: 人事労務 ]
2009年10月20日11:00:00
就業規則は企業における憲法みたいなものと前回ご説明しました。
そこで今回は、就業規則の基本的な内容をまとめます。
【作成義務】
法律上、就業規則の作成義務は、常時10名以上(パートを含む)の労働者のいる事業所です。
ただし、10名未満の企業でも就業規則は作成するのが望ましいと考えます。
理由は、まず、会社の方針を明確にでき、会社の一体感作りが図れるからです。就業規則の作成は、会社の方針やルールを書面に明確にするという作業です。その作業は、会社の今後の姿をイメージするものです。就業規則を作ることで、会社の将来像を共有でき、モチベーションを上げることになります。
また、小規模な企業の労務トラブル多くは、「社長はこう言った」、「いやそうは言ってない」という内容です。このようなトラブルは職場の雰囲気を大変悪くします。一人一人が大きな戦力である小規模の企業には大きなマイナスです。規模の小さい企業こそ、就業規則という書面で、労働条件を明確にすることが大切です。
【意見聴取・意見書の添付】
「就業規則」の作成や変更にあたって、従業員の意見を聞くことも義務付けられています。届出る際には、この従業員の意見を書面で添付しなければなりません。例え、その意見が就業規則の内容への反対意見であっても、それが就業規則の効力に影響を及ぼすことはありません。
問題になるのは、この意見書の内容ではなく、意見を聞く従業員の選定の方法についてです。ここでいう従業員とは具体的には「労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合には過半数を代表するもの」のことをいいます。過半数労働組合は問題になりにくいのですが、過半数代表者の場合注意が必要です。過半数代表者の選定にあたり従業員による挙手・投票など選定手続きの手順を正しく踏んでください。会社が指名したりしてはいけません。また、投票者の人数や意見聴取の手続きなど記録は保存しておいてください。
初めて作る就業規則の意見聴取は大体正しく行われますが、就業規則の内容を変更した場合、意見聴取の手続きがおざなりになりやすいです。後々トラブルの元になります。「変更された就業規則は、社長が従業員の意見を勝手に作成したもので無効だ」という主張がでてきます。気をつけてください
【記載事項】
●絶対的必要記載事項 ①始業及び終業時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する事項②賃金に関する事項③退職に関する事項(解雇の事由を含む)となります。
●相対的必要記載事項(定めがある場合という意)①退職手当②臨時の賃金(賞与等)の事項③労働者に負担する食費、作業用品など関する事項④安全及び衛生に関する事項⑤職業訓練に関する事項⑥災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項⑦表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項⑧その他、事業場の労働者のすべてに適用される事項
「就業規則」には、「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」が定められています。
「絶対的必要記載事項」とは、就業規則に必ず記載しなければならない事項です。具体的には労働時間、休日、休暇や賃金さらに退職の事由などです。「相対的必要記載事項」とは、規則や制度として定めるのであれば就業規則に記載しなければならない事項です。具体的には、退職手当や賞与、制裁、その他全ての労働者に適用される事項などです。
「就業規則の絶対的必要記載事項」は、労働契約を締結するときに労働者に書面で示さなければならい「労働条件の絶対的明示事項」から「労働契約の期間」「就業の場所」「従事する業務」「所定労働時間を超える労働時間の有無」など労働者毎に大きく異なる内容除いたいものです。
つまり「就業規則とは、労働契約締結の内容を書面化し公的に届出たもの」であるといえます。
【周知義務】
就業規則の全項目を従業員全員に周知させる必要があります。
【効力】
就業規則の内容は、法令及び労働協約を下回ってはなりませんし、個別の労働契約が就業規則を下回った場合、その部分が無効になります。
就業規則が効力を持つためには、労基署への届出ることが条件ですが、さらに従業員へ内容が周知されることが必要です。最近、就業規則の周知、つまり従業員なら誰でも内容を確認することができる状態・方法にあるかということについて労基署のチェックも入ってきています。就業規則が、①見やすい場所での掲示・備付けがされている、②書面交付されている、③常時確認できる状態のパソコンなどがあることのいずれかが必要です。社長席の後ろの棚ファイルされているのがいいかどうかはここでは議論しませんが。
周知は、遅くとも就業規則の施行日と同時に行うべきです。
[ テーマ: 人事労務 ]
2009年10月19日11:00:00
社会保険労務士会では、「中小企業のための就業規則講座」をテーマにセミナーを開催しています。10月7日には東京労働局主催でも同テーマでセミナーがありました。
その内容の復習を兼ねて「就業規則」についてまとめます。
【就業規則の意義】
就業規則とは「会社の憲法」のようなものです。
従業員の労働条件や職場のルールのほか会社運営の方針などを定めます。
企業経営での労務管理の骨格になるものです。
【就業規則の役割】
就業規則には以下のような役割があります。
①職場の共通ルールの確立
②労働条件を書面に明確にすることで労使の信頼関係の確立
③職場の労務トラブル防止と解決のための合理的根拠
④安心感ある職場ができて、労働生産性が向上
⑤労務紛争の多発長期化を防止し、労務管理コストを削減
などです。
【不況で増加する労務トラブル】
実は、「労務トラブルが増加しています」。
厚生労働省によると、「職場のトラブルの相談件数」は、平成20年度は、100万件を超えました。平成19年度と比べると7.8%と大きく増加しています。
内容は、「解雇」「職場でのいじめや嫌がらせ」「労働条件の引き下げ」が大きな割合を占めています。今日の不況や職場環境が大きく影響していします。
【就業規則が労務トラブルを防ぐ】
労務トラブルの原因は、
・従業員に労働条件を示していないケース
・就業規則がそもそも作成されていないケース
が、とても多いのです。
つまり、
労務トラブルを防ぐには、
就業規則を作成し、労働条件を明確にすることが重要です。
就業規則は、経営者にはとっては、労務トラブルに巻きまれないための「転ばぬ先の杖」なのです。
従業員数10人未満の会社は法律上、就業規則の作成義務はありません。
しかし・・・
定めがないという事は労働トラブルに直面した際、「会社としての基準が存在しない」という事を意味しています。
【就業規則の効力の発生】
就業規則は作っても。社長の机の中にしまっていてはだめです。
①労働者の過半数を代表する者に意見を聴く
②就業規則を労働基準監督署に届ける
③従業員全員に周知させる
以上の手順を踏んで就業規則は初めて有効になります。
又、労働基準法や労働協約を下回る定めは無効です。
【就業規則の作り方】
①就業規則の記載事項を決める
②実態に則した規則を検討する
③法令違反がないかのチェックを行う
④その他の諸規定を作成するか検討する
⑤従業員への周知、労働基準監督署への届出を行う
簡単に言えばこうなります。
実際はこう簡単に行かないものです。 服務規程や懲戒の理由など会社によって意見が違うのは当たり前です。
さらに、近年では毎年のように法改正が行われそれにも対応しなければなりません。
無駄な就業規則を使ってはいませんか ?
後で気付くと、余計なトラブルや費用が発生します。
[ テーマ: 助成金 ]
2009年10月7日11:00:00
「中小企業基盤人材確保助成金」
前回に引き続き「新たに人を雇うとき」の助成金です。
こんな時代にこそ「積極的な異業種進出・新創業とコア人材採用のチャンスだ」と考えられている経営者も少なくないと思います。
●中小企業基盤人材確保助成金」
「創業・異業種進出、生産性向上に伴い人材を雇い入れた」とき支払われる助成金です。
内容は以下の2種類に分かれています。
1)新分野進出等に係る中小企業基盤人材確保助成金
2)生産性向上に係る中小企業基盤人材確保助成金
が、しかし、「(2)生産性向上・・・」は、申請がほとんどないらしいので、「(1)新分野進出等に係る中小企業基盤人材確保助成金」についてのみ触れます。
●まず、内容を簡単にまとめると
創業や新分野進出した会社で、年収350万円以上の「基盤人材」を採用すると1人あたり140万円の助成金を受け取れ、かつ基盤人材と同数の新たに採用した一般労働者1人あたり30万円の助成金が受け取れる。 |
というものです。
窓口の「雇用・能力開発機構」で聞いたところ、
●助成金審査の入り口のチェックポイントは、
□創業、異業種進出して6カ月以内か?
・創業とは、個人事業主は開業届を出した日等、法人は法人登記日
・異業種進出は、定款変更日や店舗開設の締結日などの早い日
□異業種進出の場合、その内容は異業種進出に該当するか?
(例)中華料理店がラーメン進出、化粧品の小売店がサプリ販売、などでは厳しい
□施設・設備への支出250万円の内容と見通しが大丈夫か?
とのようでした。
●さらに、この助成金と相性がよい企業や業態は、
□個人又は数人で創業したIT企業や飲食業
□異業種進出では、中堅企業の多角化戦略
(小売業のネイルサービス業進出や、介護サービス業進出)
とのことです。
●新創業・異業種進出とコア人材採用は、企業活動では表裏一体です。
ぜひ助成金申請の検討をお勧めします。
(余談ですが、私がリクルート時代には求人特集として「新会社特集」「異業種進出のコア人材採用特集」という企画を作っていました。転職者にもとても人気のある特集でした。)
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詳しく知りたい場合は↓
▼雇用・能力開発機構のHP
http://www.ehdo.go.jp/gyomu/f-1.html
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もう少し簡単に知りたい場合は↓
<利用できる会社>
○創業、異分野(新分野)進出に伴い、会社の中核となる従業員(新分野進出等基盤人材)及びそれ以外の一般労働者を雇い入れた会社が活用できる。
○「新分野進出等基盤人材」とは、経営基盤の強化に資する従業員で、①②の両方の条件を満たすこと
①いずれかに該当する人 Ⅰ.事務的・技術的な業務の企画、立案、指導を行うことのできる専門的な知識・技術を有する人 Ⅱ.部下を指導・監督する仕事に従事する係長相当職以上の人
②雇い入れ時に雇用契約書等で年収350万円以上の賃金が支払われることが予定されている人
<助成金金額>
○新たに雇い入れた新分野進出等基盤人材について1人あたり140万円(1企業あたり5人ままで)、一般労働者について1人あたり30万円(基盤人材と同数が限度)を支給
<注意点>
○事前に、都道府県知事に改善計画(基盤人材を確保するための計画)を提出し認定が必要。
○助成金の対象となる基盤人材かどうかは、行政窓口判断で判断になります。単に役職があるからというだけでは基盤人材になりません。
○「350万円の以上」の年収要件には、賞与のような臨時及び3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれない。
○新分野進出等を目指す場合は、対象となる新たな事業を開始した日から初回の支給申請までに、創業や異業種進出ための施設(家賃可)や設備に250万円以上の支出が必要。
[ テーマ: 助成金 ]
2009年10月6日11:04:00
今回は、
「人を雇用したとき」の助成金の紹介です。
実習型雇用助成金、正規雇用奨励金、教育訓練助成金
緊急人材育成策として09年7月にできた助成金。
特徴は、比較的助成金額が大きいこと。
<概要>
「実習型雇用助成金」
これらと似た助成金に
「トライアル雇用奨励金」は最大で12万円。
「若年者正規雇用化特別奨励金」も100万円が上限。
▼トライアル雇用奨励金
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/c02-1.html
▼若者等正規雇用化特別奨励金
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/other34/seikiantei.html